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木曽谷の木工ろくろ Hygge 櫛原文子さん「毎日使いたい道具を作ります。」


木曽おもちゃ美術館での、ワークショップの様子。

自己紹介/経歴を教えてください。

  • 辰野町小野出身

  • 長野県保育専門学院を卒業後、保育士として5年間務めたのち、好きだった英語を学ぼうとワーキングホリデービザでオーストラリアへ1年間行きました。その後カナダでも1年間過ごし、帰国後は外資系企業で働き、その間に結婚しました。当時は私と夫の職場が離れていたので週末にお互いの家を行き来する所謂週末婚だったのですが、妊娠を機に退職し木曽に来ました。

オーストラリアでのワーキングホリデーの様子。
  • 2012年に上松技術専門校に入学、1年間木工を学んだのち、木祖村にあるろくろを主に扱う奥谷木工所へ就職しました。

木曽町のお隣上松町の上松技術専門校時代の様子。
  •  2022年に黒川地区に空き家を購入し、2023年9月に木工ろくろによる皿や器のギャラリHygge(ヒュッゲ)をオープンしました。Hyggeとは、デンマーク語で「居心地の良い時間や空間」という意味があります。6畳ひと間に作ったほんの小さなギャラリーですが、お気に入りを見つけていただけるよう多種多様な製品をご用意しています。どうぞお気軽にお立ち寄りください。

日々の暮らしで扱いやすい、そんなHyggeさんの木のお皿。

創業の経緯を教えてください。

小さい頃から手を動かして何かを作る事が好きでした。祖父がいつも曲尺(かねじゃく)を手になんでもすぐに作ってしまう人だったのでそんな人になりたかったのかもしれません。木曽町に越してきてかねてよりあこがれだった上松技術専門校へ入学しました。ふたりの子どもたちが同じ学校へ行くタイミングは小学校6年生と1年生になるときだけだったのでその時を狙って受験しましたが、1度きりのチャンスでしたから落ちたらどうしようとかなり緊張しました。合格発表のときは技専まで見に行き、自分の番号を見つけたときは嬉しさと安心感でその場で泣き崩れてしまいました(笑)技専ではひとつの技術にとことん向き合う時間がもて、また多くの仲間たちとも出会え、技術やものを作る姿勢の基本の「き」を教えてもらいました。ここで過ごした時間と仲間たちは宝物です。

会社で皿や器を作る中で、いつかオリジナルのデザインを自分でも売ってみたい・・と漠然と思うようになりました。ベースが主婦のため、どんな料理に使いたいか、またどんな料理に合うかを考えることは難しいことではありませんでした。作って売ることも、一緒に作ることも、使って楽しむこともやってみたいといろいろ考えるうちに本格的に形にしたいという思いが強くなり、家族のサポートもあり開業を具体的に考えるようになりました。

ろくろと向き合う時間。

なぜろくろを選ばれたのですか?

現在の勤務先である奥谷木工所から従業員募集の案内が学校へありました。そのときは家具をやっていくつもりだったのでろくろは特に考えていなかったのですが、面倒見のいい先生が「奥谷さん(木工所)いいよ~。一緒に(面接)行ってみない?」と誘ってくださったので受けさせていただいたところ、社長も若く、新しいことに挑戦したいとの熱い思いを聞かせてくださり、とんとんといいおはなしが決まりました。当時はほとんど興味のなかったことでしたがやはり歴史のある伝統工芸、学びに尽きることはありません。学校では南木曽(漆畑)ろくろを学びましたが、各産地ごとで挽き方や刃物が違い、こういったことも知れば知るほどおもしろいのです。また、木工ろくろは刃物を自分で鍛冶屋をして作るので、子どもの頃から木を削ることが大好きだった私にとってその刃物を自分で作れることは仕事抜きにして至極楽しいことです。U先生、あのとき声をかけてくださって本当にありがとうございました!木工ろくろと出会えたことは本当に幸せなことでした。

木のお皿、器、飯櫃(めしびつ)
手黒目精製の漆による拭き漆仕上げ

木曽町を選ばれた理由はなんですか?

夫の職場が南木曽(当時)だったのですが、異動があり木曽町へ参りました。所謂転勤族のため、木曽には腰掛け程度でまた別の土地へ移るんだろうと思っておりましたが、まさかこんなに長く住むことになるとは全く想像だにしませんでした。子どもたちは2人とも木曽で育ち、木曽の自然と優しい人たちに育んでいただきました。自ら選んだ土地ではありませんでしたが、南木曽滞在時代からかれこれ25年にもなり、果ては居を構え開業に至ることになりましたのできっとご縁があったのだと思います。

ギャラリーの入り口。看板は木曽町の木工作家さん制作。

実際に木曽町で暮らしてみていかがですか?

木曽町には20年来の友がおり、ここへ来たときにとても心強かった覚えがあります。彼女を通じてたくさんの頼りになる仲間にも出会え、またお互いに友人を紹介しあったりする中で多くのつながりを持つことができました。木曽町に越してきて14年になりますがその間に育んだ人間関係は誠実で確実なものとなり、公私ともになくてはならない存在となっています。今までいくつかの土地で生活してきましたが、木曽の人たちからは相手を認め否定することなく自然に受け入れてもらえるという印象を受けました。最近では自分よりずっと若い方が移住されてきており、みなさんひと癖も二癖もあり(もちろん誉め言葉です!)私にないものをたくさんお持ちなのでそういった方との交流も刺激になっています。

環境をとってみても、四季にメリハリがあり澄んだ空気や夏でも冷たい水、広葉樹が多く秋の紅葉の美しさ、厳しい寒さを超えたあとの小さな芽吹きからは大きな生命力を感じます。季節の移り変わりを自分の庭先で感じられるのはなんと幸せなことでしょう!

プライベートについておしえて下さい。

1泊から2泊でろくろや刃物の産地をまわったり、現地でおいしいものを食べるひとり旅へふらっと出かけるといったプチ旅が好きです。開店準備でここしばらくはそういったこともしばらくおあずけでしたが、もう少し落ち着いたらまたあちこち出かけたいと虎視眈々と機会を伺っています。

これから挑戦してみたいことは何ですか?

「楽しい(作る)+おいしい(食べる)+嬉しい(作ったものを使う)」をコンセプトとしてワークショップを充実させたいと考えています。季節ごとのイベントを取り入れたり、周りの方の希望などを聞きながらワクワクするようなものになるような企画をたくさん開催出来るようがんばります!

ワークショップの様子。木のお皿と器で楽しむ時間。

木曽おもちゃ美術館のお土産コーナーに、櫛原さんの木のお皿を置いてあります!ぜひ探してみて下さい!

木曽おもちゃ美術館では、開田高原在住のシェフ はらぺこの木村真理さんとのコラボを開催します。木のお皿や器で味わう木曽谷の食材。この機会にぜひ、木曽谷の魅力をご堪能ください。

また、ご自宅のギャラリーの他、木曽町福島のギャラリーカフェ SOMAさんでも櫛原さんの木のお皿や器を販売をしています。直接手に取って、櫛原さんの木のお皿や器の素晴らしさを感じてみて下さい。

インタビュー / 写真
長野県木曽町地域おこし協力隊 長屋詠一郎


長野県木曽町 【暮らしのnote】
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